放射線へ耐性示す「線虫」がDNA修復に貢献か チョルノービリ立ち入り禁止区域に生息

チョルノービリで見つかった線虫が、人類を救うかもしれないという。放射線への耐性が確認され、がんのメカニズムの解明などに役立てられるかもしれないという。

2024/03/17 10:00

研究・研究所

チョルノービリ(チェルノブイリ)原子力発電所の事故で放射能汚染された地域から、放射線物質に耐性があるとみられる線虫が発見された。研究者らは、人類のガン研究やDNA修復に役立てられるのではと期待しているという。『DailyMail』『The Indepndent』がレポートした。


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■放射能レベル危険値でも生物は繁殖

1986年4月26日、旧ソ連ウクライナ共和国の北辺に位置するチョルノービリ原子力発電所の爆発により、放射性物質が漏出。周囲の村や町は廃墟と化し、被ばく者や後遺症がある人も含め死傷者は数十万人ともいわれる。

そして約40年が経った現在も放射能レベルはいまだ危険値だが、野生動物は半径30キロメートルにわたる立ち入り禁止区域内で、繁殖しているという。

研究者らはこの区域にカメラを設置し、野生動物の生息状況について監視を続けてきた。これまでに、オオカミ、オオヤマネコ、ネズミ、イノシシ、シカ、馬などの多様な野生動物が、地域を徘徊する様子が確認されているそうだ。

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■線虫は放射線による損傷なし

そして最近になり、立ち入り禁止区域内に生息する一部の生物に、新たな進化が見られている。研究者が注目したその生物とは、単純なゲノム(遺伝子)と急速な繁殖力を持つという「線虫」だ。

線虫は、ニューヨーク市内のような放射能が低レベルの地域から、宇宙のように高レベルの領域まですべてで発見されている。ところが、チョルノーブリの立ち入り禁止区域にいる線虫のゲノムからは、放射線による損傷の痕跡が検出されなかったという。

ただしこれは、チョルノービリが安全地域になったということではなく、線虫の回復力の強さを証明するものだと研究者は見ている。

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■DNA修復への期待

また今回の発見は、チョルノービリの線虫が放射線に対してより耐性があるというわけではなく、放射能環境が線虫の進化を抑圧しなかった結果だという。

研究者は、DNAの損傷に対してより感受性の高い線虫株を使用することで、発がん性物質の影響について知ることができると期待している。この分析が進めば、がんの遺伝的なメカニズムが明らかになるかもしれないそうだ。

これらの線虫がどのくらい立ち入り禁止区域にいたか、あるいはこの祖先がどの程度の放射線を受けたかなど、詳しいデータはない。しかしながら、環境中の危険因子に対する人間の自然変位について、より理解を深めることができると考えられている。

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(取材・文/Sirabee 編集部・本間才子

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