ハプニング続きで向かった函館 「不思議で素敵な店」に酔いしれる

【松尾貴史「酒場のよもやま話 酔眼自在」】講演会のために向かった函館へ。そこで経験した不思議かつ快適な夜とは…。

2023/11/19 05:00

函館

先日、北海道の函館での講演会に呼ばれていそいそと出かけた。朝9時55分発の全日空機なのに、いつもぎりぎりにしか行動しない私がどういう気まぐれか、2時間前に着くようなタイミングで羽田へ向けて出発した。


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■早めの出発、思わぬ落とし穴

そろそろ首都高速の湾岸線への分岐だ、ここから一瞬新幹線の車庫が見えて壮観なのだよな、と思った途端になぜか、携帯電話のありかが気になった。高速運転中なのでしかとは調べられないが、腰のベルトにホルダーを挿しているはずの場所をまさぐれど、どこにも気配がない。

世田谷の自宅に置いて来たに違いないと、すぐさま取って返して家の寝床の上を見たら当然のようにそこにあった。単にベルトからすり抜けただけのようだが、こんな時に限って運転し始めてしばらく携帯電話がどこにあるか気にも留めなかったことを悔いた。

またぞろ空港へ取って返し、余分に往復したとは言え時間は十分にある、出発時間まで40分もあるではないか。

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■ 空港で予想外のハプニング

駐車場に入庫しようと入り口に向かって驚いた。何と入庫まで180分というプレートを駐車場のおじさんが掲げているではないか。いくら何でも間に合わない、咄嗟に環八あたりまで出て一般のコインパーキングにでも停めようと、走り回って第3ターミナル近くのエアポートガーデンの駐車場に停めることができた。

ところが今度はタクシーが来ない、第2ターミナルまでは時間内に歩いて行けるような場所ではない。もっと長く感じたが、5分ほどでタクシーがやって来た、すかさず乗り込んだがなかなかとぼけたドライバーさん、色々道を迷いながら第二ターミナルの車寄せで降りたのが9時34分、チェックイン締め切りまで1分しかない。

人をかき分けカウンターに着いたら「たった今締め切りました」と言うも、一生懸命悲しい顔を作っていたら無線やら電話やらiPadやらで、おそらく出発ゲートに連絡を取ってくれている様子、ぎりぎりだったので憐憫があったのか、つまりは函館に飛ぶことができた。全日空の皆さん、ありがとう。

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■不思議な鮨店との出会い

90分の講演を終え、せっかくはるばるきたぜ函館なのに日帰りする手はないと、泊まる予定にしておいた。

この日は土曜だったのだが、4日前の火曜日にある鮨店に連絡をしたら「あー、誰から聞いてうちを知ったのですか?」「友人からなのですが」「そうですか、今店にいないので、明後日の今時分に連絡ください」と言うので木曜日に電話をかけたら、「誰からうちのことを聞いたのですか?「えっと、友人から」「ああ、一昨日の方ですね、おひとりさま、大丈夫です」と言うやりとりで予約することができた。

当日、店の前に行ってみたら、看板も見えず、電気もついているのか外からでは分からない雰囲気だが、格子の戸から明かりが漏れていたので勇気を持って開けてみたら、ちゃんと営業しておられた。と言うよりも、開店時間ちょうどに行ったのに、もう常連と思しき人たちで随分賑わっている。カウンターの端に座り、ビールを注文すると、ご主人がまたもや、「誰から聞いて来られたんですか」と3回目の同じ質問をされた。

「友人からです」「ああそうですか」何とも不思議だったが、おまかせの握り寿司を12個(貫ではなく)いただいて、程よく美味しく、ビールと日本酒を飲んで会計が6,000円という、このグレードで東京では考えられないお得感で嬉しい気分で店を後にした。

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■函館の夜に酔いしれる

その後、敬愛する太田和彦さんから薦められた洋風居酒屋「杉の子」という、昭和レトロ感満載の素晴らしい店に向かうも、あまりの寒さにコンビニに入ってネックウォーマーや温感肌着を購入、トイレで着替えようとしたら先客がなかなか出てこない。

果たして、水の流れる音と共にドアが開いて、若いカップルが2人で出てきた。やはりこの地は広いのでトイレまでゆったり、「多目的だなあ」などと独りごちつつ防寒対策をして「杉の子」へ。ホットウイスキーやカクテルをいただいて、またもやお勘定の手頃さに驚き、それならばもう一軒行けるぞと、すぐ近くの「モヒート」という、名前はシンプルだがなかなか酒揃えや知識の豊富なマスターの店でラムやカクテルを数杯。月に一度くらい働いていると言うアルバイトの女性がまた清涼感のある美人学生で、過不足のない応対に快適で、少しばかり飲みすぎてしまった。

翌日、これまた太田さんから教えてもらった「滋養軒」で素晴らしい塩ラーメンと餃子を食べて二日酔いを治して感動しつつ東京に戻った。慌てて停めた駐車場代は、9,600円になっていた。当然、今度からはバスで行く。

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■著者プロフィール

松尾貴史

Sirabeeでは、俳優、エッセイストの松尾貴史さんの連載コラム【松尾貴史「酒場のよもやま話 酔眼自在」】を公開しています。ワインなどのお酒に詳しい松尾さんが「酒場のあれこれ」について独自の視点で触れていく連載です。今回は、函館の夜で出会った店に関するエピソードを掲載しました。

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(文/松尾貴史

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