習政権が反スパイ法の改正案を可決 今後さらに邦人が拘束される恐れ

スパイ行為の定義を拡大させた改正反スパイ法が可決。今後中国国内で当局の監視の目がいっそう強まることが予想される。

習近平

全国人民代表大会の常務委員会は先月26日、2014年に施行された反スパイ法の改正案を可決した。改正法は7月から施行されるが、警戒すべきはスパイ行為の定義の大幅な拡大だ。


関連記事:中国の反スパイ法改正で監視や罰則強化 過去には日本人が拘束・逮捕も

■恐るべき反スパイ法に警戒を

これまでスパイ行為は国家機密の提供だったが、今回の改正法では「国家の安全と利益に関わる文書やデータ、資料、物品の提供や窃取」も加えられた。

スパイ行為そのものだけでなく、それに関わる文書やデータなどが追加されたことで、今後は中国の歴史博物館などに行って情報を入手するとかでも拘束されることも考えられよう。

しかも、改正反スパイ法には「その他のスパイ行為」というあいまいな表現も依然として残っており、もうこれは恣意的な乱用が相次ぐことは避けられない。

関連記事:中国逆ギレで日中関係悪化に待ったナシ 日本は米国に追随するな

■相次ぐ邦人拘束

3月、大手製薬会社のアステラス製薬に勤務する男性が北京で拘束された。男性は中国で20年も勤務経験があり、拘束されたその日に帰国予定だったという。同男性も反スパイ法に違反したとして拘束されたが、具体的にどのような行為が原因かなど具体的なことは一切発表されていない。

このケースで拘束された日本人は少なくとも17人に上っている。去年も反スパイ法に違反して6年の実刑判決を受け刑期を終えた男性が帰国し、2019年には中国近代史を専門とする北海道大学教授が帰国直前に北京の空港で拘束される事件もあった。

習政権が国内で日本人や米国人、台湾人などへの監視の目を強めていることは疑いの余地はない。今後はスパイ行為の定義拡大と恣意的な運用に拍車が掛かり、在中邦人の拘束が増える恐れがある。

・合わせて読みたい→中国の反スパイ法改正で監視や罰則強化 過去には日本人が拘束・逮捕も

(取材・文/セレソン 田中

【Amazonセール情報】ココからチェック!