ポカリスエット、日本の「とんでもない悪習」ぶち壊していた 40年前にそんな出来事が…

水分補給の頼れる相棒・ポカリスエット。過去の日本に存在した「悪しき風習」を打ち破るのに、一役買っていたことをご存知だろうか。

2023/04/21 11:45

今まで意識していなかった知人の年齢を聞いて、思わず驚いた経験はないだろうか。こうした出来事は、何も人間だけに限った話ではない。

今回は、水分補給時の頼れる相棒「ポカリスエット」の年齢と、その歴史について探っていこう。

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■ポカリの発売年、分かる?

ポカリスエット

「ポカリ」と聞くとスポーツドリンクの印象が強い人もいるかと思うが、当然ながらポカリを飲むべきタイミングはスポーツ時に限った話ではない。むしろ日常生活におけるこまめな水分補給こそ、真に体が求めているものである。

なお、記者が特に印象に残っているポカリとの思い出は部活動などのスポーツ時ではなく、幼少期に風邪をひいてしまった際のこと。母親はその都度必ずポカリを買ってきてくれ、体調がすぐれないときは「卵の乗ったうどん」と「ポカリ」が我が家のスタンダードであった。その影響からか、現在も体調に少しでも異変を感じた際は「まずポカリを買おう」という意識が働くほど。

思い返せばミドサー世代の記者にとって、ポカリは物心がついたときから当たり前のように存在していた、いわば「年齢不詳」の商品である。そこで今回は、全国の10〜60代の男女1,000名を対象とし、アンケート調査を実施することに。

「ポカリスエットが誕生した年はどれだと思う?」という設問に対し、「1970年」「1980年」「1990年」の3択を用意したので、ぜひ読者諸君もどれが正解かを予想してみてほしい。

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■半数以上が見事正解

ポカリスエットグラフ

調査の結果、「1970年」と回答したのは全体の35.0%、「1980年」を選択したのは58.8%、「1990年」と回答したのは6.2%と判明。ポカリの発売開始年は1980年なので、過半数が正しい年を認識していたワケだ。

続いては、ポカリを製造・販売する「大塚製薬株式会社」に、商品について詳しい話を聞いてみることに。その結果、「ポカリが日本の歴史を変えた」といっても過言ではない、驚きのエピソードが明らかになったのだ。


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■発売当初の「状況」に驚き…

ある日、出張中のメキシコで激しい下痢に襲われ、大塚製薬のとある研究員は脱水症状に陥ってしまう。現地の医師からは炭酸飲料を渡され、その際「もっと人間の体に合った、吸収の良い飲み物はないだろうか」と考えるようになる。

さらに、手術後の医師が水分補給のために点滴液を飲むのを見たことから「飲む点滴液」というアイデアを提案。こうした体験がヒントとなり、汗で失われる水分と電解質(イオン)をスムーズに補給できる「汗の飲料」というコンセプトが加わり、新商品の開発が始まった。

当時の日本は、経済成長とともに健康志向が高まり、スポーツやアウトドアなどで日ごろから汗をかくシーンが増加していたという。そのため多くの人々に飲んでもらえるよう、あえて「スポーツ」に限定せず、「日常生活のなかで飲む健康飲料」を目指して研究開発が進められ、80年に誕生したのが「ポカリスエット」なのだ。

ポカリスエット
(発売当初のポカリスエット)

しかし、革新性ある商品の常というべきか…それまでにない飲料であったため、大塚製薬は「当初は全く受け入れられませんでした」と、発売当時の様子を振り返っている。

そんな逆境の中で生まれたポカリだが、大塚製薬は挫けずに商品の魅力をアピールし続け、初年度には「飲んで体感してもらう」ためのサンプル品を3,000万本も配布したという。

そうした数々の企業努力が実り、発売から2年目の夏には見事大ヒットを記録。結果として「イオン飲料」という新たな市場を築く偉業へと繋がったのだ。

しかし我われ日本人にとって、ポカリはそれ以上の「素晴らしい功績」を残しており…。


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■「昭和の悪しき風習」を打ち破ったポカリ

コンプライアンスに厳しい令和の視点から見ると、昭和の価値観やルールには、驚かされる部分が多い。特に「喫煙」周辺はその代表格だが、昭和を代表する日本の悪習といえば、やはり「部活動中の水分補給禁止」を語らぬワケにはいかないだろう。

「体が冷えるから」「お腹に水が溜まるから」「疲れやすくなるから」といった謎理論を掲げた完全なる「根性論」だが、かつては本気で信じられ、多くの部活動で水分補給が禁止されていたのだ。

そんな「修羅の国」と見紛う80年の日本に大塚製薬はポカリを携え、「科学的根拠」をベースに水分・電解質補給の重要性を提唱。「スポーツ中に水を飲むな!」という誤った指導法や、風潮を変えるのに、大きな役割を担ってくれたのである。

大塚製薬 担当者は「90年代、それまで『熱射病』と言われていた分野で『熱中症』という定義を作り、熱中症対策の啓発活動や事故を防ぐ取り組みを開始し、現在も粘り強く継続しています」「年々気温が高くなることもあり、この分野は継続的な啓発が必要と考えています」と、脈々と続く企業努力について強調している。

そして00年以降、国を跨いで移動する人々が増えてきた際には、飛行機などでの長時間移動による「旅行者血栓症」を防ぐには「イオン飲料が有効である」と証明。この研究は「旅行時」だけでなく、自然災害における「避難所生活」での対策にも役立っているのだ。

ポカリスエットグラフ

ところで、前出のアンケート調査の年代別回答を見ると、ある傾向に気づかないだろうか。そう、全年代を通じて「50代」の正答率が突出して高く、他の世代と20ポイントもの差をつけているのだ。

今回の調査結果を受け、大塚製薬は「50代はポカリスエット発売時に活動量の多い世代であり、若年時に当ブランド体験をしたことがある、親和性の高い年代層です」「現在では責任あるポジションに就いている方が多く、コロナ禍でも出勤をしなければならない等、行動が制限されなかった世代でもあります」と、分析している。

やはり、発売当時をリアルタイムで経験している世代は、ポカリに対する思い入れも強いのだろう。大塚製薬が「自分の健康は自分で守る、といった気持ちが働き、コロナ禍で全世代で活動量が落ちる中、若年時から馴染みあるポカリスエットを選んで頂いた層でもあります」とのコメントを寄せてくれたのが印象的であった。

ポカリスエット

現在、我われが当たり前のように享受している生活の「常識」の中には、ポカリスエットならびに、大塚製薬の努力によって実証されたものが決して少なくないはずだ。

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(取材・文/Sirabee 編集部・秋山 はじめ

【調査概要】
方法:インターネットリサーチ
調査期間:2023年4月16日~2023年4月18日
対象:全国10代~60代男女1,000名 (有効回答数)

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