約40年ぶりのインフレ上昇率… 給料上がらない日本のリアルな「現在地」

【舛添要一『国際政治の表と裏』】インフレとデフレ、そして円安…日銀の金融政策はどのような意味を持つのか? 実は日本の生産性に問題が。

2023/01/22 06:00

値上げ続くスーパー

スーパーマーケットに買い物に行くと、サラダ油、小麦粉、ビールなどの値段が上がっているのに驚く。これは、皆の実感だろうが、統計データでもそれが示されている。

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■食料品、光熱費など諸物価が高騰している

11月の消費者物価指数を見ると、「総合指数」は2020年を100として103.9、前年同月比は3.8%の上昇。「生鮮食料品を除く総合指数」は103.8、前年同月比で3.7%の上昇。「生鮮食料品及びエネルギーを除く総合指数」は102.0、前年同月比は2.8%の上昇。

これは1981年12月以来、40年11ヶ月ぶりの高い水準である。2月にはさらに多くの商品が値上げとなるという。この原因は、コロナ流行、ウクライナ戦争、円安などである。

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■賃金が上がらない先進国は日本のみだ

最近の物価高に日本人が驚いているのは、これまで25〜30年間もデフレが続いてきたからである。30歳以下の日本人はインフレというものを経験したことがない。物価は上がらず、下がることすらよくあった。そういう生活に慣れていると、今のような急激な物価高はこたえる。問題は、賃金が上がず、物価上昇に追いつかないことである。

賃金については、日本では諸先進国に比べて、驚くほど上がっていない。1995年〜2020年の25年間に、各国で名目賃金と物価が、それぞれどれくらい伸びたかを見ると、韓国が2.92倍・1.92倍、アメリカが2.23倍・1.7倍、イギリスが2.08倍・1.64倍、ドイツが1.64倍・1.41倍なのに対し、日本は0.96倍・1.04倍である。

日本のみが賃上げ率が物価上昇率よりも低いのである。そもそも、賃金が0.96倍というのは、上がるどころか、下がっているということである。これでは、生活防衛のために消費を抑制するしかない。


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■おカネは人間の身体に例えると血液である

このようなデフレと闘うために、日本銀行は金融緩和政策を採用した。20年前、国会議員の私は、国会で日銀総裁に質問し、緩和策の採用を訴えた。血液が潤沢に体中を回ってくれれば元気が出るが、不足すると貧血になって倒れる。経済もそうで、血液に当たるのがおカネである。そこで、金融の量的緩和策を実行しろと私が訴えたのは、貧血状態の身体に輸血するということである。

たとえば日銀が、市場に出回っている巨額の国債を買いとる。たとえば、私の保有する国債を100万円分買ってくれれば、私の手元には100万円の現金が入る。その現金を消費に使ったり、会社であれば新しい工場を作ったりする。そうすると、経済が拡大するのである。

この政策は一定の効果があったが、現金が入ってきても「買いたい物がない」、工場を作っても「仕事がない」というような状況だった。そのため、金融緩和政策は、期待するほどの成果が上がらなかったのである。

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■賃金が物価以上に上がるのが理想だ