鉗子分娩で頭部を強く引っ張られた赤ちゃんが死亡 母親にリスクの説明はなし

「絶対に大丈夫。無事に済む」とは、誰も断言できないお産。だからこそ、実績も豊かな熟練した医師の元で産みたいという女性は多い。

2020/11/22 08:00

分娩・出産
(vadimguzhva/iStock/Getty Images Plus/写真はイメージです)

お産は、陣痛の波がかなり激しくなっても、そこから赤ちゃんが誕生するまでにどれほどの時間を要するのか、誰にも予想がつかない。

赤ちゃんを早めに取り出さなければ母子の健康を確保できない、そんな事態に陥ることもしばしばだ。だからこそ医師はその時、続いてどのような方法を採り、そのリスクについても母親に知らせる義務があるはずだ。


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■出血性ショックで死亡

2019年11月、英国・エセックス州のチェルムズフォードにある地区総合病院「ブルームフィールド・ホスピタル」の産科で、ひとりの赤ちゃんが帝王切開術の末に死亡した。

赤ちゃんの名はフレデリック・ジョセフ・テリーくん。死因は脳内出血を原因とする循環血液量減少性ショックだった。このほどその検死法廷が開かれ、遺体の検死にあたったキャロライン・ビーズリー・マレー氏が結果を報告した。

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■頭の中で大量出血

マレー氏は死因審問で、帝王切開術より前に、大型の丸いはさみで赤ちゃんの頭を挟んで引っ張り出す「鉗子分娩」が試みられたことに触れた。

鉗子分娩は、お産がスムーズに進まない時、母子の健康を守るうえで必要と判断された場合に限って行われる。しかしそれは、フレデリックくんの頭の皮膚下にある帽状腱膜、さらに頭蓋骨にダメージをもたらし、大量の脳内出血が出血性ショックにつながっていた。

「鉗子で頭部を挟む力、引っ張り出そうとする力が、あまりにも強かった可能性がある」と、マレー氏は指摘している。

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■医師の技量と知識に問題か

マレー氏は医師の技量不足のほかに、知識面の不足や手順のずさんさを挙げた。難産の判断を下すにあたって赤ちゃんの頭の向きを骨盤X線撮影で確認するべきところ、それが行われなかった可能性があるというのだ。

フレデリックくんは母体の中で、回旋の異常を起こしていた。後頭部が母体の背中側に来てしまう「後方後頭位」という状態になっており、それがわかった時点で、普通なら直ちに帝王切開術が行われるとしている。


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■母親にリスクの説明もなく

鉗子分娩のリスクについて、何ら説明を受けていなかった母親。脳内出血がひどいフレデリックくんはやがて心肺停止状態に陥り、40分かけた蘇生法にも息を吹き返すことはなかった。

マレー氏は、「これらのミスがなければ、健康な赤ちゃんとして誕生し、育っていたであろう」とまとめている。

病院側は当初、フレデリックくんの死を検視が不要になる「死産」として扱おうとした。だが遺族は納得せず、不審な点も多いことから警察に相談。州検死局が裁判所に司法解剖の必要性を訴えて受理され、病院から遺体を引き取っていたことも明らかにされた。

今後、病院側のそうした無責任な姿勢についても厳しく問われるだろうという。

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(文/しらべぇ編集部・浅野 ナオミ

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