精巣に居すわり回復を遅らせる新型コロナウイルス 不妊の可能性を論じる学者も

新型コロナウイルスに感染すれば若者でも思わぬ影響がある、そんな意識と緊張感が必要だ。

2020/04/26 10:30

股間
(peakSTOCK/iStock/Getty Images Plus/写真はイメージです)

新型コロナウイルス感染症 (COVID-19)の死亡率については、「男性のほうが高い」との報告が各国の医療機関から上がっている。遺伝子構造の約8割が一致するというSARS(重症急性呼吸器症候群)でも、やはり男性の死亡率の高さが際立っていたが…。


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■ウイルス排除にかかる日数

今、健康科学に関する論文を公開する『Medrxiv』で高い関心を集めているのが、米国ニューヨーク市の「モンテフィオーレ・メディカル・センター」から発表されたプレプリント(査読前の論文)だ。

発表したのは腫瘍学者のアディティ・シャストリ博士。

インドの微生物学者であるジャヤンティ・シャストリ博士の協力を得て、ムンバイの感染症専門病院に入院した68人の新型コロナウイルス患者を観察したところ、女性が平均4日でウイルスを体から自然に排除させるのに対し、男性は6日を要することがわかったという。

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■精巣でくすぶり続けるウイルス

コロナウイルスは主に、細胞の表面に存在する受容体タンパク質の「ACE2 (アンジオテンシン変換酵素2)」と結合し、ヒトの体内に侵入する。

そのACE2受容体は気管支、肺、心臓、腎臓、消化器などのほか、男性の精巣組織でも多く発現するが、精巣は血液精巣関門により免疫系から隔絶されているため、ウイルスがここで最後までくすぶり続けることが考えられるという。

2月には中国・南京医科大学ほかの共同研究チームが、「男性が新型コロナウイルスに感染した場合、不妊の原因になる可能性もある」と論じて波紋を広げていた。

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■「女性はなぜ強い」に諸説

男性が重症化しやすい原因のひとつとして、喫煙率の高さを挙げる国は多い。そもそも喫煙によるDNAの突然変異はがんに関連する遺伝子の損傷にもつながるため、「コロナ禍」をきっかけに禁煙に挑戦する男性も増えているようだ。

そしてX染色体の数の差を唱える学者もいる。数百の遺伝病に関わる重要な遺伝子が多く並び、免疫力の強さにつながるX染色体。これを男性が1本しか持たないのに対し、女性は2本持っている。そのため「女性のほうが基本的に病気に強い」と従来から考えられてきた。


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■女性ホルモン説も

新型コロナウイルス感染症の重篤化を免れる女性が多いことについては、さらに「女性ホルモン説」の研究も進められている模様だ。

理由は、SARSが流行していた際のマウスを用いた実験で、卵巣を取り出したメスの死亡率がいっきに上昇していたこと。その頃から「女性ホルモンに何らかの作用」という説が唱えられるようになった。

ただし呼吸器疾患、糖尿病、高血圧、冠動脈疾患などがあると、男女を問わず重症化のハイリスク群となる。大切な家族を守るためにも、誰もが「絶対に感染しない」という心がけが必要だ。

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(文/しらべぇ編集部・浅野 ナオミ

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