「闘魂注入ビンタ」で荒稼ぎ 6歳児を死なせたイカサマ療法士に禁錮刑

重い病を抱えて弱くなっている人の心につけ込む詐欺行為。民間のインチキ免疫療法もその一つだ。

2019/12/15 17:40

ビンタ
(BrilliantEye/iStock/Getty Images Plus/写真はイメージです)

元プロレスラーで政治家でもあったアントニオ猪木氏が、弱くなっている人の心に喝を入れるために行って話題になった「闘魂注入ビンタ」。これで重い病が治るとは誰も言っていないというのに…。


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■東洋医学に混じる詐欺行為

神秘的な東洋医学の世界に魅了される欧米人は多い。中国に古くから伝わる薬膳や漢方薬、お茶などを勉強したいと考えている人も大勢いる。

そんな東洋医学の静かなブームに支えられ、オーストラリアのシドニーでわずかながら注目を浴びるようになったのが、中国人が広めていた「ビンタ療法(スラピング・セラピー)」というきわめて怪しい代替医療だった。

しかし2017年、ホン・チー・シャオという56歳の施術者による手荒いその療法を受けた6歳の男の子が死亡。シャオと男の子の家族数名が逮捕・起訴された。

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■1型小児糖尿病の男の子

男の子はウイルス感染などにより免疫に異常が起きて発症する1型小児糖尿病を患っており、日々インシュリン注射が不可欠だった。

辛い治療に胸を痛め、効果的な民間療法がないか模索していた男の子の両親。あるワークショップで「ビンタ療法」を知り、『ガンや糖尿病は我々の得意分野』といううたい文句に騙されたまま、施術者のシャオに連絡をとってしまった。

シャオは1週間の施術で日本円にして19万6,000円を要求。両親はわらをもすがる思いでそれを了承したという。

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■「糖尿病は得意分野」と男

「西洋医学で糖尿病は治せない。そんな辛い注射はすぐにやめさせたほうがいい」と男の子の両親に助言したシャオ。続いて、その小さな体をひたすら引っ叩く荒々しい施術が始まった。

しかしインシュリン投与をやめたことで男の子の体は低血糖の状態に陥り、体調はみるみる悪化。黒い物を嘔吐したことで母親はいよいよ不安になり、シャオに「これで本当に大丈夫なのか」と相談した。

するとシャオは「効果を発揮する前に症状が一時的に悪化する『好転反応』だろう。自己免疫力により症状はやがて回復する」などと説明。しかし少年は痙攣発作を起こして死亡した。その体には無数のあざが確認されたという。


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■「信頼していた」落胆の父親

このほどその裁判がやっと結審。父親、母親、そして祖母も過失致死罪で起訴されていたが、判事はシャオに懲役10年の実刑判決を言い渡し、ほかの3名を無罪とした。

その法廷では、シャオがろくに反省もせずに「アルツハイマー病、自閉症、麻痺、ガンなどが治った」などと語りながら、男の子の死後も詐欺以外の何ものでもないその施術を続けていたことが明らかにされた。


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■ビンタはただの「喝」

日本でもアントニオ猪木の闘魂注入ビンタは有名だが、それはあくまでも痛みと強い衝撃で弱っている気力や根性に喝を入れてもらうためのものだ。

しかし中国では、「体内でアドレナリンが噴出し、自分の免疫力が高まる」などとうたうビンタ療法がいまだに行われているとのこと。怪しい民間療法にはくれぐれも注意が必要だ。

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(文/しらべぇ編集部・浅野 ナオミ

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