「CDはもうダメ」なのか…?新宿と渋谷のCD小売の今昔を徹底分析

出版不況、音楽不況といった言葉は、もう聞き飽きた感すらあるほどにここ数年言われ続けていることだ。そんななか、11月9日に放送された音楽番組『LIVE MONSTER』(日本テレビ系)において、ゲスト出演した歌手の椎名林檎がサラッと口にした、「もうCDはダメでしょ」という発言が波紋を呼んでいる。

椎名ほどのビッグアーティストがそう発言するということは、やはり「CDは売れない」という現状は想像以上の程度であることがうかがわれる。そこで今回、CD販売の現状について、2014年現在の大都市における「小売」に焦点をあてて見てみた。対象とするのは、東京を代表する2大都市、新宿と渋谷だ。

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■新宿

11月6日、JR新宿駅と直結する大型商業ビル「LUMINE EST」の6階に入っている「HMV」がリニューアルオープンした。しかし、“リニューアル”とはいうものの、その実は“店舗縮小”だ。

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半分以下になるほど店舗面積が大幅に小さくなり、リニューアル以前まで存在していた複数の大きな新譜試聴コーナーや音楽情報誌コーナーは消滅。“必要最低限”と評したくなるCDやDVDが置かれ、ファンが「お金を使う」アイドル系やK-POPの商品はしっかりとコーナーが設置されている。

そして、ローソン・HMVオリジナルの限定商品(HMVジャパンは、2011年9月にローソンエンターメディアが吸収合併)が一角に多数並べられている点を見ても、“売れる”商品に絞って置かれている印象だ。

「新宿のHMV」といえば、かつては新宿高島屋の12階に、フロアの半分以上を占める巨大な店舗があった。広い店舗内に各ジャンルのCDが分かりやすく並べられ、ジャズやクラシック専門の“店舗内店舗”なども置かれていた。国内・海外の有名アーティストもリリースイベントを開催した場所である。

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しかし、現在そこには「ユニクロ」がまるまる入っており、高島屋の外壁からもHMVの跡形はきれいさっぱりなくなっている。新宿を訪れる音楽ファンは現在、南口の商業ビル「Flags」で長年営業するタワーレコードか、ソウルやヘヴィメタなどニッチ(便宜的な言い方とご理解ください)なジャンルに特化した東南口周辺のディスクユニオンか、西口のヴィジュアル系に特化したエリアで買い物を楽しんでいるといえそうだ。

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■渋谷

2000年代初頭に発売された渋谷を紹介するシティ情報本を見ると、2014年現在と比べたその変貌ぶりに改めて驚くばかりだ。たとえば“本屋”でいえば、当時渋谷のランドマークのひとつだった文化村通りの巨大本屋「ブックファースト」は、「109」向かいのビルの地下に場所を移し、現在跡地にはファストファッションブランド「H&M」の店舗が立っている。

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そして、同じようにファストファッションブランドの店舗に入れ替わることとなったのが、2010年に閉店した超大型店舗「HMV渋谷店」だ。現在は、「Forever21」になっている。

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かつて、写真を撮影した場所からは、アーティストのポスターや音楽ショッピングを楽しむ多数の客がガラス越しに見えていた。その光景は、“渋谷名物”ともいえたもの。2010年8月、この光景がなくなったことは、多数の音楽ファンに大きすぎる衝撃を与えた。

それから4年、現在渋谷で邦楽洋楽の新譜を幅広く購入できるCDショップは、やはりタワーレコード。そして2番手は、スクランブル交差点間近に位置するTSUTAYAの販売フロアだろう。

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そんななか、HMVは少し違った路線を歩んでいる。2014年8月にオープンした「HMV record shop 渋谷」は、コアな音楽ファンを存分に楽しませる店舗だ。

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かつて、アナログレコードを販売する店が数多く立ち、“DJの聖地”と呼ばれた渋谷の宇田川町エリア。この「HMV record shop 渋谷」自体、人気レコード店だった「DMR」の跡地に立っており、中古から新譜、オールディーズから最新、邦楽から洋楽まで数多く商品が揃えられている店舗内の雰囲気は、“DJの聖地”の復活を宣言しているようにも思える。アナログレコードのみでなく、中古CDも多数並べられているため、音楽ファンにとっては純粋に“楽しい”場所だ。

前述のように、新宿では“売れる”商品に絞った小売展開をしている一方で、渋谷ではコアな音楽ファン向けの新店舗をオープンしているHMV。全く違う方向性に思えるが、“音楽にお金を使う人を呼び寄せる性格”という点で共通性を見出だすことは可能だ。

CDが“売れた”時代からみると、大きく変貌した大都市におけるCD小売業。そのなかで変わらず大型店舗を維持し続けるタワーレコードの底力には驚くばかりだが、HMVの動きからは、ニッチなジャンルを深く好む音楽ファンたちの存在が重視されていることもうかがえる。

上に挙げたような“跡地”の写真を見ていると、なんだか「昔は楽しかった」とノスタルジーに浸ってしまいそうなところだが、CD小売業はそれぞれ模索しながら現在も様々な形で踏ん張り、コンテンツを提供し続けている。

今回は渋谷と新宿を取り上げたが、それ以外の場所においても、実際にCDショップに足を運んでたまにお金を使ってみる…。単純にそういった行動をとる人が増えれば、また“楽しい”小売店が増えることになるかもしれない。

(文/しらべぇ編集部

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Sirabee編集部

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